そうか、もう君はいないのか

そうか、もう君はいないのか
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しめしめ、夜である。
夜に男が何をするかといえば、決まっているであろう、パソコンに向かって夜のオカズを探すのだ。
落とした動画の再生が始まる。
「すごいな…これ」
とやっているとき、ふいにマウスのポインターが動かなくなった。
「???!!!」
カチッ…カチカチカチ…カチカチカチカチカチカチカチカチカチ…
右クリックも左クリックも利かない。
動画の内容、熱さとは裏腹に、パソコンは無情に非情に冷徹にそれを流し続ける。
ど、どうしたら動画の再生が止められるんだ!
こんなときに嫁が入ってきたらどうなるんだ!
…結婚生活が終わる…
妹子にもすがる思いで、ふとマウスの裏側を見てみた。光学マウス特有の赤い光が出ていない。
「そうか!電池か!!ふははははは!私に不可能は無い!!」
非常な焦りを高笑いに変え、勢いよく電池ボックスを開けた。
「な…なんやて…無い!!電池が無い!!!」
あえぎ続けるパソコン。
「せめて音量ぐらい消して…」
とマウスに手を伸ばすも、はっ…それすらできないことに気づき愕然。
自分がどれほど、このネズミちゃんに生かされていたのかということに改めて気づく。

全ての人間は愚かである
失って初めてその本当の価値を知るのだから
〜リチャード・F・スミス〜

「ど、どうしたらいいんだぁぁぁぁ!!」
そしてもっと重要なことに気づく。
「そうか、もう君はいないのか」
嫁は里帰り出産のため帰郷中であった。
イクとこまでいった動画が止まり、ある意味イッてしまった私は、その場に崩れ落ちた。