人様に見せる姿

人様に見せる姿
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私が住んでいるところは寒い。
家の中でもヒートテックのシャツ、ヒートファクトのタイツ、腹巻きが欠かせない。欠かせないほど寒いから着ているのだが、だいたい腕をまくって過ごしている。
「紫のジャージ…よくみるとハーフパンツじゃない?」
正解だ。覗くタイツふくらはぎが、私の魅力を加速させている。

◆ 私の中の公

職場で、町合同の会議に参加することがあった。
「スーツを持っていかないと」
普段は作業着である。が、公の場でそれは社会人としてどうなの?という話だ。
私は忘れずにスーツケースを手に持ち作業着で駅に向かう。
ディテ(嫁)「スーツ持って作業着って…あなたの頭では電車内は公に入ってないの?通勤は作業着持ってスーツでしょ普通。」
はっ!入ってなかった。
いくら生きても学ぶことはあるものだな、と自分のスポンジのような学習能力に感心しつつ、次から
「作業着を着て、その上からスーツにしよう」
と決心した。

◆ 着替え

職場の先輩やら上司と一緒に着替える。
インナーはもちろんヒートテックのシャツ、ヒートファクトのタイツ、そして腹巻きだ。
家着と違うのはハーフパンツがあるかないかだけである。
さすがに人様に見せられる格好ではない。
こんな格好で人前に出られるのは、志村けんの「変なおじさん」かワンピースの「ゾロ」か冬のソナタの「ぺ」ぐらいである。
中でも「ぺ」さんはこの格好でも色気を出せそうで恐ろしい。
話がそれたが、なかなか私は自分を捨てきれず、前進タイツアンド腹巻き姿を先輩方にさらけ出せずにいた。
腹巻きのカイロポケットから飛び出したカイロを拾ったり、スーツを取り出したり、
「そう!そうなんすよね」
と聞いてもいない話に相づちを打ったりしてごまかしながら、イヨイヨ着替えないと会議に間に合わないぞ、というところで大変なことに気がついた。
「ね、ネクタイが無い」
「いや、す、スラックスすらない」
あるのは「部屋とYシャツと私」だけである。あと、ジャケット。
Yシャツにジャケット、そして下だけ作業着…、そんな姿で更衣室を出て、
「なに、その格好♪高校生のヤンキーみたいよ」
女性陣にキャーキャー言われる中、現状を報告。
「そりゃ…もう、アフロ君。作業着で行くだ。」
上司の一言である。

◆ エピローグ

大きな広間で行われた会議では、総勢80名が二列コの字型に陣取っていた。
全員スーツ。
いや、私以外、スーツであった。
ちらちら視線がこちらに刺さる。それを一緒に感じている同僚はニヤニヤ笑っている。
発言者より、司会者より、誰よりも目立っている。
オンリーワン。
本日、いや今月、いやいや本年度、もっともアフロが輝いた瞬間であった。