脱走

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隣の部屋の縁側を開け、洗濯物をディテ(嫁)が干しているとき、私がふすまを開けてしまった。
私の足元をすり抜け、颯爽と我が家の畑へと飛び出した白い影…シロキチである。
「逃げた!コラー」
慌てて足袋のまま私も畑へダイブするが、駐車場と畑を仕切る柵をくぐるのは人外の者にしか出来ぬ芸当で、ただただ畑の真ん中に足跡をスタンプするだけの結果となった。
柵の向こうからこちらを振り返り一言
「ニャーォ」
こんにゃろーめ。
足袋の裏についた土をはらい、急いで靴を履き、玄関を抜け、反対側の駐車場へと駆け抜ける。
見当たらない。伏せる。
おつむ小さきネコっこめ!
隠れるっちゃぁ車の下ばっかり行きやがって。
匍匐前進第四の型で目標に向かう。
こんなところで腹ばいに寝転んだのは初めての経験である。駐車しようとするアパートの住人に轢かれても文句は言えないのではないか…。
二階を見上げると、上に住むおばちゃんが洗濯物を干しながら、微笑ましそうにながめていた。
声やらがつつぬけで、すべてをお見通しなのだろう。
おだやかな昼だ。