松川バッティング

松川バッティング
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日曜の話。
友だちの松川君(仮名)が神奈川から信州に遊びに来てくれた。
大学体育会系の部活動の中で、
サザエ家のマスオさん的オアシスな役割を果たしていた彼は、相変わらず1対1のタイマンでも私を包み込む力量であった。
「結婚決まったんだ」
私が報告をする。
「まじで」
「会社辞めたんだ」
「…そば、食いに行くか。」
戸隠の山笑は、そりゃあもうシコシコの蕎麦を出してくれる、私的No.1蕎麦屋なのだけど、
いかんせん働き盛りの私たちには、そばではお腹いっぱいにならないわけで。
働いていないけど。
「腹いっぱいにならへんよな?」
「そばソフト、食いに行くか。」
飯を食べ、デザート食べると何したくなる体育会。
体を動かしたくなるのである。
「運動したくない?」
「打ちに行くか…そば。」

そばではなく、球を打ちにきた。
バッティングセンターである。
「あのホームランって書いてる板に当てたら、たぶん真ん中の光んねんで」
「あの電光掲示板が?光らないでしょ?」
松川君は半信半疑だが、とにかく狙っていくことにした。
4回千円のカードを松川君は買ってくれ、120キロに挑戦する。
狙いはホームラン。
…の板。
バン…
バン…
バン…
三振。
120キロの球を受け続ける後ろの板がかわいそうで泣けてくる。
バン…
当たらない。が、5球目あたりからチップが出るようになり、最後にはファールを打てるようになった。
二番バッター、松川君。
バン…バン…バン…バン…バン…バン…バン…
……
次に私たちは90キロに挑戦することにした。
カッ…
カッ…
カッ…
遅くなったし目が慣れてきたせいかボールは見える。
見えるのは見えるのだが山なりに飛んでくるのがいけない。
前打者が小学三年生ぐらいのちびっ子だったのも手伝って、ひざ下にストン、野茂ばりに落ちてくる。
でもさっきよりは狙えるかも…
なんとか持ち上げ、
カーン…カーン……
次の打者、松川君につなげた。
ちびっ子たちと私が見守る中、最後の打者、松川君が立つ。
逆光の松川君、影の松川君は凛々しく振りかぶり…
バン…バン…バン……
また後ろの板が痛めつけられる。板だけに痛々しい。
バン…カッ…バン……
後6球…というところだった、
カキーン、
「嘘だろ」
ちびっ子がつぶやく間、ボールはホームランの板に吸い込まれ、
「まじかよ」
ガンっ
当たっ…た。
私たちちびっ子軍団は総立ち。
松川君の方へ向かって手をたたきながら飛び跳ねる。
「当たっちゃった」
微笑み振り返る松川君の後ろで、ホームランの電光掲示板がボワンと光っていた。
バン…バン……
写真の左上にある白い点が見えるだろうか?
松川氏はあれに当てたのである。
ヒーローインタビュー、
「景品のスプリングルス、俺がもらってええん?」
「どうぞどうぞ」
今日はありがとう、久々にはしゃいだわ。
いやいや、俺も楽しかったよ、またちょくちょく帰ってくるから。
ほなそのとき、んじゃ。
バイバイ。
いい週末であった。
鐘さんに、バットの握り方から教えてもらおうかしら。