一途な浮気を言えなくて

一途な浮気を言えなくて

大学2年からだから、早いもので相方とはもう5年の付き合いになる。
あれは3年目だったか。桜も散る五月病の季節。
今頃思春期がきたのか、それとも反抗期なのか。
相方の機嫌がすこぶる悪い状況が続いた。
更年期障害だったのかもしれない。
ちょっと指で突っつけば怒ったのか、すぐ無表情に固まった。
睨んでくるクセにこちらからの質問にはかたくなに無視で、しばらくほっておこう、トイレや散歩に行って帰ってきてみたら、苦心して作った記事をむげにも消されていたりした。
我慢ならん!かくなる上は、と別れる勇気もなければ、
あれでもいいとこがあるんや、5年の付き合いで情も深くなる。
終わらしてしまうのはもったいない。
となれば浮気?つまみ食いで日頃の鬱憤を晴らし、だましだまし関係を繋いでいくか…と、こっそり二号さんと付き合いだしたのが2年前。
天網恢々疎にして逃さず、とはよくいったもので、
ご察しの通り、だましだましの関係が続くはずもなく、この度5年と半年に及んだ相方ととの関係は、プツーン、という音とともに幕を閉じることになった。
そしてこの文章は二号さん…新しい相方で作っている。

アフロの新相方
〈新しい相方〉

物持ちはいい方で、アジリティのウェストポーチだって、ベルトが切れはしたが、これまただましだまし使っているし、
第二の仕事道具である四色ボールペンは、インクが無くなれば勿論替え芯を用意し使い続けている。
350円のボールペンを一本、ひたすら1年以上使っている御仁には、自分以外ではお会いしたことがない。

齋藤孝さんの?四色ボールペン!?

先日、件のボールペンの替え芯を例によっていつもの文房具屋へ替えに行った。
「黒と、青をお願いします」
とペンを手渡すとき、ふと気づいたのだが持つ部分、ゴムでできたグリップの部分が火傷の水ぶくれのように膨らんでいる。
薄皮一枚下に空気が入り込んだ按配だ。
本を読むのもこれ、下書きするにもこれ、添削、サインも全部これ、ではさすがに酷使しすぎたらしい。
「エアークッションさながらやんけ」
とペンを褒め称え、これまたこれまただましだまし使っていたのだが、ついに水ぶくれが破けてしまった。
実をいうとこの四色ボールペンは五代目で、前四代の皆々様もちょうど親指があたる部分、そして人差し指があたる部分が破け、それでも働き続けてもらい、最後には肉がえぐれるようにグリップが無くなってしまった。
ご臨終をさとったのか、私に嫌気がさしたのか、いつも入れているはずのアジリティのポケットから、人知れずいなくなってしまわれた。
マメも皮が破れたときが一番痛い。
黒いゴムが紅く、とはならないが、破れたそれは見るからに痛々しい。
「替え芯があるなら、替えグリップもあるんじゃ…」
一週間もたたずに、再び文房具店へと足を運ぶこととなった。
なにぶん替えグリップなど買ったこともなければ、聞いたこともない。
そんなものあるのか?と存在すら怪しい代物を取り寄せてもらおうというのである。
普段から作務衣で歩き回る私だって、さすがに声をかけにくい。
店員さんに声をかけにくいなんて、
「『モテる男になる魔法のチカラ』って本、ありますか?」
以来だ。
まごまごしていてもしょうがない、と思った瞬間、察してくれたのかナイスな店員さんが声をかけてくれた。
「替え芯ですか?」
「あ、いや、今日は替え芯ではなくて…」
と求めるモノを実物を提示して指し示すと、
「少々お待ちください」
ナイス店員さんは電話帳のような本を持って、向こうにいるもう一人の女性店員のところへと歩いていった。
本をめくりながらブツブツしゃべりあう女性たち。
ガールズトーク中ちらちら見られるなんて、いつぶりだろう。小学生?
「なんやねんあいつら、勝手に噂しやがって。言いたいことがあったら面と向かって言えや。好きなら好きやと」
と面と向かって言えぬ自分が懐かしい。
二人を眺め妄想し続けること3分、ナイスな方が戻ってきて口を開く。
「お客様、申し訳ありませんが、あっ、これは在庫カタログなんですけど」
開口一番にして残念な結果発表であるとうかがえる。
「ここを見てもらえば判りますように」
見なくてもいおうとしていることは小学生の私でも判る。
「500円以下の商品に関しまして、芯以外の部品はお取り寄せできない」
もういい、やめてくれ。
「といいますか、メーカーの方でも卸出ししていないんですよ」
やめてくれぇぇぇえぇ。
「あんたにとっては500円以下の、それこそたった350円のボールペンを使い回すケチな男やと思っとるんやろ!?だがな、この一途さが世の中のどんな役に立ってるか…、ほら、あのMOTTAINAIの黒人さん思い出してみ?」
と喉まで出かかった負け犬台詞なんていえるわけもなく、だいたいからして想像通りの結果に、
まぁそりゃそうだよ、
と店を後にして見上げた空は、やけに雲が多くスカッとしない感じであった。

スカっとしないでスカイ

文房具にこだわっている同志の記事
今日も最後まで、ありがとうございました。